「莉子ちゃん、ごめん。私、もう出勤なの。お願いしてもいい?」

「はーい」


一階から聞こえてくる彼のお母さんは、看護師をしている。

この家は、医師をしてるお父さんが建てたものだ。
だけど…そのお父さんは、自分が院長をしている病院の看護師と浮気をして、一年前に離婚に至ってしまった。

そしてこの家は、いわば慰謝料のようなものだと響ちゃんから聞いている。


一階に下りると、立派な朝食が用意されていた。

響ちゃんのお母さんは、結婚してからは専業主婦をしていたけれど、離婚を機にまた看護師として働き始めたのだ。
日勤専門のようだけど。

離婚に至ってしまったという負い目があるのか、響ちゃんの無気力にもなにも言わず、ただ、毎日淡々と食事を用意していて、心配だ。