現実を見て?

どうあがいたって、私はあなたを幸せにできないんだよ?


「わからなくたって、いいじゃないか。
俺が毎日教えてやる。子供にだって、きちんと話せばわかる」

「そんなの、きれいごとだよ!」


お母さんに「あなた誰?」って言われるんだよ? 
そんな状況想像してみて?


「だけど、顔がわからないのは、莉子のせいじゃないじゃないか」


そう、だよ。
私はこれでも必死に努力しているつもり。

でもね、周りからはそうは見えないの。
ひどい母親だって、思われるの。


彼の腕に掛ける手に力をこめる。
この手をずっと握っていられたら……どんなに幸せだろう。


「莉子……あきらめよう」

「えっ?」

「事故の前に戻れないなら、他の人と同じ生活なんてしなきゃいい。
俺達は俺達なりの幸せがあるだろ?」