ポロポロこぼれる涙が、彼の腕にも落ちてしまう。
それでも、もう止められない。


「俺が覚えてるから」


彼の声も震えている。


「莉子が覚えていられないなら、俺が莉子のことを覚えてるから」

「響、ちゃん……」

「だから……ずっと隣にいてくれ」


どうしたらいいのだろう。

フェイスブラインドがどういうことなのか、一緒にいてくれた彼はよくわかっているはずだ。
それでも、私が隣にいてもいいというの?


彼の腕に、私のものではない透明な液体がこぼれ落ちた。


「お願いだ、莉子。一生、俺の隣にいてくれ」


絞り出すような彼の声は、私の心を揺さぶる。
私だってあなたの隣を歩いていきたい。

でも……。


「でも……街ですれ違っても、知らんぷりするんだよ。
同じ服着てたら、違う人についていくかもしれない……。
それに、もし響ちゃんと結婚できても……生まれた子の……」


そこまで言ったところで、辛くて言葉にできなくなる。