「心配かけてごめん」と心の中で芽衣に謝りながら、裏庭の花壇の方へ向かった。
雨が降ってきたのだ。水やりは必要ない。
花壇に咲き誇っているベゴニアは、私の気持ちとは対照的に輝いて見える。
「響ちゃんの、バカ」
花に話しかけると花が元気になると聞いたことがあるけど、愚痴を聞かせたらどうなるんだろう。
そんなことを考えながらボーッとしていると、後ろで足音がした。
響ちゃん?
振り向いたときに最初に目に入った濃紺の傘を見て、一瞬そう思った。
だけど……。
「長瀬さん、おはよ」
「おはようございます」
そこに立っていたのは、平松先輩だった。
花壇の前にしゃがみ込んでいた私は、ゆっくり立ち上がった。
「今日も来てたんだね。雨、降って来たのに」
「……そう、ですね」