気が付けば、自分のことより彼のことを考えていた。


「響ちゃん……泣かない、で?」


自分はポロポロ涙をこぼしているくせに、彼に泣いてほしくない。
私の大好きな響ちゃんには、いつも笑っていて欲しい。


今度は自分から彼に抱きついた。

もう離れない。
一番好きな人を、もう間違えたくなんかない。


「私、ずっとずっと響ちゃんのことが……好きだった。
だけど、響ちゃんが私のことを幼馴染みとしか見てくれないなら、あきらめるしかないと思った」

「莉子……」


震える声を懸命に絞り出す。


「病院で響ちゃんに酷いことを言ってから、来てくれなくなったこと、ホントはすごく悲しかった。
だけど、哲哉先輩が私を懸命に支えてくれていると思ったから、私……」


あなたのことを必死に忘れようとしたの。