勉強や陸上をやめてしまったのは、離婚がきっかけだったのは知っていた。
尊敬する人の裏切りが、ここまで彼を追い詰めたなんて残酷だ。
「だから、親父に復讐したかったのかもしれない。
俺達が付き合うことで、親父に犯した罪を認識させてやりたかったのかもしれない。
互いの子が恋人同士なんて、笑えないだろ?」
悲しげに苦笑する響ちゃんは、私が思っていたよりずっと、深い傷を負っていたのだ。
「まったく、バカだよな。
結局俺も和代も、もっと傷つくのに。
和代と付き合ってわかったのは、莉子が好きでたまらないということだけだった」
私よりずっと大きな響ちゃんが、小さく見える。
こんなに傷だらけな響ちゃんを、どうしたら救ってあげられるの?