違うよ。
きっと、違う。

響ちゃんは違う名前で呼ばれて辛くなかったの?

自分のためだけなら、そんなの耐えられないよ。


「響ちゃん、違うの」


勝手にあふれる涙を拭うのはもうやめた。
彼なら弱い私も、バカな私も……全部全部受け止めてくれるから。


「哲哉先輩と付き合ったのは……響ちゃんを忘れるためなの。
だって響ちゃんが、和代先輩と、キス……」


そこからは言えなかった。
だけど、私がふたりのキスを見てしまったことに気が付いたようだ。


抱き寄せていた私をゆっくり離して、顔を見つめる。

涙でぐちゃぐちゃになった顔なんて見られたくない。
思わずうつむくと、「莉子」という優しい声が耳に届いた。