「莉子、聞いてくれ」
興奮して泣きじゃくる私を、響ちゃんは不意に抱き寄せた。
「イヤだ。聞きたくなんかない!」
「頼む。聞いてくれ」
離れようともがけばもがくほど、彼の腕に力がこもる。
筋肉質の彼の腕は、小さな頃とは違う。
「莉子……」
頭の中がグチャグチャだ。
ホントは……響ちゃんに守られていたことがうれしくてたまらないのに、哲哉先輩だと嘘をつかれていたことに憤りを感じる。
最初から言ってくれればよかったんじゃないの?
私……ずっと騙されていたんだよ?
多分、千春や芽衣、父や母にも。
「嘘をついていたのは謝る。ごめん」
響ちゃんの肩に顔を押し付けたまま、彼の言葉を聞く。