「哲哉先輩のバッグと、同じ色だから?」


そう口にした瞬間、我慢していた涙か溢れて、ポタリと床にこぼれた。


「どうして泣いてるんだ。そんなの、偶然だろ」


響ちゃん。
それならどうして視線をそらすの?


それから黙ってしまった響ちゃんの前で、ポケットからスマホを取りだした。


「莉子?」


不思議がる彼の前で、ある番号を表示する。
そして……ボタンを押した。


――ブーブー

するとすぐに、バイブ音が聞こえてくる。


「響ちゃん、電話だよ」

「莉子……」

「早く……出なくちゃ」


私に急かされた彼は、唇を噛みしめてスマホをバッグの中から取り出した。

彼は黒いスマホの画面を見つめる。