「どうして、白を選んだ、の?」
声が震える。
今私は、大切なことを知ろうとしている。
響ちゃんはその質問に答えず、私の方に歩み寄ってきた。
「ちょっと来い」
私の手首をつかむ彼の手は、いつからこんなに大きかったのだろう。
彼は玄関で靴を脱ぐと、同じように脱いだ私を二階の自分の部屋に連れて行った。
しばらく来なかったこの部屋は、少しも変わっていない。
淡いブルーのカーテンは、響ちゃんが小学生の頃ペンで落書きをして、こってりしぼられたあとに買ってもらえたものだ。
そして、ほんのり響ちゃんの匂いがする。
私、彼の匂いも手の感触も、忘れてた――。
「莉子……あのさ……」
私の手を離した響ちゃんは、バッグを置くと私を真っ直ぐに見つめる。