それからどれくらい経ったのだろう。
やっぱり考えすぎだったかもしれないと思い始めたころ、緩い癖のある髪をした清和高校の男の子がこちらの方に向かってくるのが見えた。
一瞬呼吸が止まる。
やっぱり、そうだ。
私はスマホを片手に、家を飛び出した。
その男の子は、響ちゃんだ。
私が玄関から飛び出すと、彼は自分の家の門を開けて入って行くところだった。
「響ちゃん!」
門の外まで走り寄って大きな声をあげる。
振り向いた彼は、響ちゃんに違いない。
……白いエナメルバッグを持った。
「莉子……」
どうして驚いてるの?
どうして、そんなに?
「響ちゃん、バッグ……変えたの?」
私の質問にハッとした彼は、一瞬エナメルバッグをチラッと見て、「そうだよ。古くなったから」と答える。