「それでは終わります」


井上先生の声が耳に入るのと同時に、私はカバンを持って立ち上がる。
そして最後の挨拶をすると、教室を飛び出した。


「莉子?」


後ろで千春が呼ぶ声がする。
だけど、足は止まらない。


ごめん、千春、芽衣。
今はどうしても確かめたいことがあるの。


事故の後、初めてひとりで行動した。

だけど怖くなんてない。
だって、きっとあの人が守ってくれるから。


先輩と待ち合わせをしている文房具店まで、一気に駆け抜けた。

先輩のクラスはいつも終わるのが早くて、私が先についたことはない。
今日も、そうだ。


シルバーのスマホを操作している、白いエナメルバッグを持った人は、私に気が付いて顔を上げた。