帰りの渡り廊下には、もうふたりはいなかった。
たくさんの疑問とモヤモヤした気持ちを抱えたまま、その日の授業は終わった。
ホームルームの終わりがけに窓の外を眺めると、もうたくさんの生徒が帰っていく。
こんなにたくさんの人がいるのに、私……どうして哲哉先輩がわかるのかな……。
ふとそんなことを考え始めてハッとする。
私が哲哉先輩を見分けているのは……彼が指定した文房具屋にいてくれるからとか、家に迎えに来てくれるから、とか……。
あとは柔らかい癖のある髪とか、背の高いところとか……。
あれこれ考え始めると、散らばっていたパズルのピースが少しずつはまっていくように、頭の中が整理されてくる。
あとは、白いエナメルバッグ……。