すぐに始まった実験には、当然身が入らない。
なにかの薬品が反応して、ビーカーの中の液体が色を変えていた。
「ねぇ、芽衣」
理科の授業が終わるとすぐに、芽衣に話しかけた。
「ん?」
教科書を胸に抱えた芽衣は、少し困った顔をする。
芽衣は顔に出る。
「和代先輩の言ってたことだけど、あれって……」
どういうこと?と聞こうとすると、すぐにやって来た千春が口を挟む。
「莉子。きっとふたりはケンカでもしたんだよ。
それで莉子に当たってるんじゃないのかな」
こういう時は口下手な芽衣の代わりに、いつも千春が話してくれる。
だけど、あの場から私を離そうとした芽衣の力強い手の感触が、未だに腕に残っている。
芽衣があんなに強く自分の意志を示したのは、初めてな気がした。