私の名前を呼び捨てしたのは、響ちゃんだ。


「島田さん、阿部さん。悪いけど莉子を連れてってくれる」

「はい」

「響ちゃん、でも……」


私の知らないところで、なにかが大きく動いている。
そんな気がした私は、そこから動けない。


「いいから、行け」


和代先輩が、泣きそうな顔をして私達の様子を見つめている。


「莉子、行くよ」


今度は強引に私の手を引いた芽衣が、私をその場から離した。


「ねぇ、なにが起こってるの?」

「響先輩に任せればいいよ。莉子は哲哉先輩だけ信じて」


千春はそう言ったけど、とても納得できなかった。



チャイムと同時に理科室に滑り込むと、林にギロッとにらまれてしまう。

それでもお説教は回避できたようだ。