千春が私達を促して再び歩きはじめると、渡り廊下の向こうに女子生徒がひとり立っていて、じっとこちらを見つめている。

青いラインの上靴は二年生だ。

だけと、当然誰だかわからない私は、そのまま通り過ぎた。


「長瀬、さん」


その人の横を通り過ぎるとすぐに、私の名前が呼ばれた。


「はい」


返事をしながら振り向くと、芽衣が私の腕をギュッと握る。


「ごめんなさい。私、顔がわからなくて。お名前聞いてもいいですか?」


クラスの皆のおかげで、カミングアウトも自然とできるようになった。


「和代です。堤(つつみ)和代」

「和代先輩……」


響ちゃんの、彼女だ。


「莉子、遅れるから行こう?」


芽衣が私の手を引っ張るけど、先輩は私になにか話したそうだ。