向かいの窓から、ジャージ姿の響ちゃんがこちらを見つめている。


「莉子」


響ちゃんの声が聞こえる。
もう二度と話してくれないと思っていた、響ちゃんの声が……。


「泣くな」

「……無理だよ」


かすれた声は、響ちゃんには届かなかったかもしれない。


「莉子は必ず幸せになれる」

「えっ?」

「じゃあ、な」


響ちゃんは焦るようにカーテンを閉めた。
彼も学校に行く準備をするのだろう。

だけど、私の心はホカホカに温まっていた。


哲哉先輩という存在ができて、響ちゃんに容易く話しかけることすらできなくなった。
響ちゃんの方もそうだったのかもしれない。


だから、彼が私のことをもう忘れてしまったのかと、悲しかった。

でも、きっと陰で応援してくれている。
忘れてなんて、いないんだ。


大切な幼馴染みは、一番欲しかった言葉をくれた。