「響ちゃん……」


窓を閉めようとすると、ジャージ姿の男の人が家に入って行くところが見えた。
響ちゃんだ。


『大きくなったら莉子と結婚する』


小さな頃、そんな無邪気な発言をして、双方の両親を笑わせていたっけ。


「お嫁さんに、なりたかったな」


いつかウエディングドレスを着て、大好きな人と手をつないで……幸せに、なりたかった、な。


響ちゃんはそのまま家に入ってしまった。


「今日は雨降らなさそうだな」


まだ朝だというのに、太陽が燦々と輝いて存在感を示している。
ちっとも涼しくなってこない。


学校に行く準備をしなくちゃ。

窓を閉めようとすると、強い視線に気が付いた。


「響、ちゃん……」