一生自分のことを見分けてくれない妻と、お腹を痛めて産んだはずなのに、他の子に紛れてしまうと我が子だとわからない母親。


そんなの想像するだけで辛すぎる。

それなら、ひとりで生きて行った方が、いい。


だったら勉強しなくては。

妻としてじゃなくていい。
せめて、哲哉先輩のそばで働ける看護師になりたい。

そうして、彼の幸せを見届けられたら、幸せ、かな……。


そんなことを考えながら部屋の窓から空を見上げると、泣きたくなんてないのに、涙が一粒こぼれていく。


やっぱり、もう、あの日には戻れないんだ、私。


贅沢なんて言ってはいけない。
せめて好きな人が幸せになってくれれば……。

自分に何度そう言い聞かせても、溢れる涙は止まらなかった。