「お母さん、ありがと」
私の大好きなケーキを覚えていてくれたんだ。
中学生くらいからドンドン親離れして、父や母より友達と過ごす時間が多くなり、一緒にケーキを食べたのだって、もういつのことだったか覚えていない。
誕生日ですら、一緒にお祝いするのは家族ではなく友達になっていたから。
夏未先生が、『診断を受けるって必ずしも辛いことばかりではない』と言っていたことを思い出す。
あの時は素直にその言葉をのみこめなかったけど……フェイスブラインドになったから、こうして父や母の私への変わらぬ愛を実感することができたような気がする。