先輩が第一志望としているのは、電車で四十分ほどで行ける国立大学だ。
国立なら多少学費も抑えられるというもの理由のようだ。
学費のことまで気にできる、たったひとつ上の先輩が大人に見える。
「あの大学って、そういえば遊園地の方だよね」
哲哉先輩と初めてキスをした、あの遊園地の路線なのだ。
「遊園地? あぁ、そうだな」
あれっ?
なんだか先輩の反応に違和感を覚える。
もっと話に乗ってくると思ったのに。
そんなことを話しているとあっという間に家についてしまった。
「莉子。また明日な」
「うん。ありかとう」
本当は引き留めたいところだったけど、午後から塾が入っているようだ。
始業式の日もだなんて、ちっとも休む暇がない。