「変なこと言って、ごめん」
そう口にしながらも、自分の考えがもしかしたら正しいのかもしれないと、思い始めていた。
朝、別れた場所に哲哉先輩はいた。
白いエナメルバッグが目印だ。
「平松先輩、お任せします」
「ありがとう。島田さん、阿部さん。それじゃあ」
先輩はもうふたりともすっかり打ち解けている。
「先輩、わざわざごめんなさい」
「なに言ってんだよ。俺が莉子と一緒にいたいんだから」
本来ならば、他の多くの生徒のように駅に向かうはずだ。
「暑いな。行こうか」
自然に差し出された手を握ると、先輩はにっこり笑った。
「そういえば昨日模試の結果が出てさ」
「えっ! どう、だった?」
「うん。国立の医学部、いい感じで届きそうだ」
「すごい!」