「あのさ……さっき鈴木さんが言ってたことなんだけど」
私がそう切り出すと、あの場にいなかった千春が首を傾げる。
「……勘違いだよ。
哲哉先輩と響先輩って、背の高さも同じくらいじゃん。
それにふたりともイケメンだし、見間違えたのよ」
「なにがあった?」
私達の会話に千春が割り込んでくる。
「鈴木さんの友達が、駅で莉子と響先輩を見たなんて言うから、見間違えだって言ってたの」
芽衣がなんだか必死に見える。
「……そんな訳ないよね。
まさか、莉子、浮気した?」
あははと笑い飛ばす千春は、「教室帰るよー」と私達を促した。
教室に戻っても、気もそぞろだった。
出席番号順に提出していく宿題も、前の人がよくわからない私は芽衣に助けられっぱなしだった。