あっ……。

ひとつの仮説が一瞬私の頭をよぎって、ハッとする。


落ち着いて。
そんなわけない。そんな……。

芽衣も千春も哲哉先輩に会っている。
母だって、そうだ。

だから、そんなわけ、ない。


混乱したまま淡々と進む式をボーッと眺めていた。


「莉子、教室帰ろ」


終業式が終わると、すぐに飛んできたのは私より少し後ろにいた千春だ。
胸のあたりに下げられている大きな名札は、本当に役立つ。


「お疲れ、莉子」


ニコニコ顔なのは、芽衣だ。


「芽衣、あのさ……」


潮が引くように、たくさんの生徒が体育館から出ていく。

だけと私は、一歩も動けないでいた。

この中に、哲哉先輩も響ちゃんもいるはず、だ。