「違うの?」
「莉子は平松先輩と付き合ってるんだよ。見間違えだよ」
なんだかムキになる芽衣に驚きながら、私もうなずいた。
「そう? でも見かけたのひとりじゃないよ。三人いる」
「絶対、違う!」
「そっか……」
納得したようなしてないような複雑な顔をした鈴木さんは、声を荒げる芽衣にしぶしぶ頷いた。
体育館に着くとすぐに始業式が始まった。
校長先生の決まりきった話を聞きながら、鈴木さんに言われたことを考える。
『夏休みに駅前で』って……私が駅に行ったのは、千春と芽衣とデザートを食べに出かけたときか、哲哉先輩と水族館に行ったときしかない。
だとしたら、やっぱり哲哉先輩と見間違えたのかな。
ふたりは背格好も似ているし。