「阿部さんどうしたの?」


話しかけてきたのは、同じクラスの鈴木さんだ。

こういう時でも名札のカードをつけていてくれるからわかって助かる。
きっと恥ずかしいだろうに。


「忘れものだって」

「じゃあ、私が一緒に」


鈴木さんは千春と芽衣がいつも私を挟んで行動しているのを見ていたせいか、千春のいた場所に並んでくれた。


「長瀬さんってさー、前、平松先輩と付き合ってたよね」


突然そう言われて驚く。
今もなんだけど……。


「でも、今は新山先輩なんだね。
夏休みに駅で手をつないでるの見た子がいるよ。モテモテだね」

「えっ……」


響ちゃんと、夏休みに?


「違うよ!」


私より先に声をあげたのは芽衣だった。