フェイスブラインドになって初めて知った、皆の優しさだった。


すぐに始業式のために体育館に移動が始まった。


「莉子、行ける?」

「うん」


千春と芽衣に挟まれながら廊下に出ると、人が溢れていて緊張する。

だけど、このままじゃいけない。
クラスの皆が応援してくれている。


『みんなイモだと思えばいいから』という哲哉先輩の言葉を思い出しながら、ゆっくり進んでいった。


「あっ、しまった。カズにノート貸してたのに返してもらうの忘れてた」


カズというのは千春の彼氏だ。

式が終わればすぐにホームルームが始まる。
宿題のノートも提出しなければならない。


「ごめん、莉子。ちょっと行ってきていい?」

「うん。芽衣がいれば大丈夫」


申し訳なさそうに手を合わせる千春は、教室の方に向かった。