私は小さく頷いた。

いくら今哲哉先輩と幸せだとはいえ、長い間私を支えてくれた響ちゃんのことを、まるきり忘れるなんてできない。


「響先輩、自分のしたいようにしてると思うよ。
だから、なにがあってもきっと幸せなんじゃないかな」


突然饒舌に語り始めた芽衣に驚きながらも、私は頷いた。

響ちゃんに直接聞けない今、そうであることを願いたい。

ランニングを再び始めた彼なら、きっと両親の離婚から立ち直ったはずだと、信じたい。


教室に入ると、私の顔を見たクラスメイトが慌てて名札のカードを付け始めた。

一度も話したことがない赤石君も、普段はとんがっている高橋君も、皆、だ。


「ありがとう」


私が素直にお礼を言うと、高橋君が「おぅ」とぶっきらぼうに返事をしてくれる。