「じゃあ、芽衣だわ」
「えっ……私、じゃないもん! 莉子だよ、莉子」
「私?」
芽衣がにっこり笑う。
私……ホントに雨女かも。
そんなことを考えながら、灰色の雲が流れていく空を見上げると、思い出した。
和代先輩のアンティークな花柄の赤い傘を。
キョロキョロ辺りを見回したけど、まだ降りはじめのせいか傘を差している人は少ない。
「どうしたの、莉子」
その様子に気が付いた千春は尋ねた。
「うん……あのね。和代先輩って、待ってる?」
自分では傘がなければ確認できない。
「うーんと……まだ、かな」
千春が辺りを見回して教えてくれる。
「響ちゃん……別れちゃったのかな」
「どうかな。莉子、響先輩のこと、心配?」