千春の『忘れるしかない』という言葉は、私の胸に突き刺さった。
確かに正論だ。
忘れるしか、ない。
「まぁ、よく考えなさいよ。
あっ、数学の宿題、明日の朝、写させて」
「ちょっと千春。最初からやる気ないじゃん」
顔を見合わせて笑う私達は、ずっとこれからも仲良しでいられると思う。
ふたりと別れて家に帰ると、自分の部屋に戻って窓を開ける。
ここから響ちゃんの部屋が見えるのだ。
響ちゃんの部屋は、カーテンが風に吹かれて揺れていた。
「帰ってるんだ……」
他人の生活を盗み見るなんて、悪趣味なのはわかってる。
だけど、どうしたって気になるのだ。
だけど……。
「あっ……」
カーテンが一瞬高く舞い上がり、部屋の中がほんの少し見えたとき、そこにいた響ちゃんが……。