呆れられて嫌われて……そんなの辛すぎる。
それなら夢なんて見ない方がいい。


「絶対に嫌いになんてならない。一生、一緒にいる」

「一生?」

「そう。いつか莉子と結婚して、温かい家庭を作りたい」


先輩は私をそっと離すと、顔を覗き込み、手を握った。

この大きな手が好きだ。
私を守ってくれる、この手が。

だけど顔がわからないと、この手すら間違えてしまうのだ。


「ずっとなんていられない。私に未来なんてないの。
結婚して子供ができても、自分の子の顔が覚えられないんだよ? 
そんなの、耐えられるわけない」


絶対に無理だ。
現実を直視すればするほど、辛い未来しか思い浮かばない。


「子供がわかる歳になったら話してわからせればいい。
莉子に愛がないからじゃなくて、脳の傷のせいなんだって」