大好きな人の顔すらわからないって、こんなにも辛い。
涙が止まらなくなった私を、先輩は近く公園まで連れて行ってくれた。
「ごめんなさい。せっかく連れて来てくれたのに」
もう謝罪の言葉しか浮かばない。
懸命に涙を拭っても、それが止まる気配はない。
「莉子、謝らないで。無事で、よかった」
そして先輩は私を抱き寄せた。
「怖かった、な」
「……うん。うん」
先輩の黒いシャツをギュッと握って、嗚咽を漏らす。
辛い。
やっと“フェイスブラインドの自分”というものを少しずつ受け入れられるようになってきたと思っていた。
ホントにホントに少しずつだけど、夏未先生の言うように『諦める』ということだって、できるようになってきた。