わかってる。
声を張り上げて私を探し、真剣に怒ってくれたあなたが、哲哉先輩だということは。


「なんだお前ら」

「行こう……」


先輩は、鋭い眼光でにらみつける黒いポロシャツの男から私を遠ざける。

私の手を引く先輩の力がいつもよりずっと強い。
彼はそのまま私を連れて、水族館を出てしまった。


「ごめん……ごめんな、さい」


手が震えているのが自分でもわかる。

ずっと私の手を離さない先輩にも、当然伝わっている。


「莉子が謝ることじゃない。俺がいけなかったんだ」


そんなことない。
先輩は最大限の注意を払ってくれていたと思う。

それに、なりふり構わず私を探してくれなければ、私は今頃……。


「ごめんなさい。ごめんなさい」