「ひとりで寂しそうだったから、誘ってあげただけなんだけどな、俺。
君だってうれしそうについてきたじゃん」
そんな。
ついてきたのは、哲哉先輩だと思ったから……。
「莉子! 莉子!」
そう叫ぶ声が近づいてきて……。
「お前、なにしてる!」
目の前にいた黒いポロシャツの男の胸倉を、その人がつかんだ。
「なにって、この子がついてきたんだけど?」
悪びれた様子もなく平然とそう言ってのけるポロシャツの男に、唖然とする。
私……私……。
「莉子は……莉子、は……」
そう言うと、唇を噛みしめている。
この人相手に説明したって、無駄な時間になることは目に見えている。
ゆっくり手を下ろしたその人は、今度は私の手を取って「哲哉だ」とつぶやいた。