ショッピングセンターで会った夢にだって、正直に「顔がわからなくなっちゃった」と言えばよかったのだ。
それなのに、友達なのにわからないなんて失礼だとかなんとか考えてしまって、勝手に苦しんでいたんだ。
フェイスブラインドの告知を受けてから、ずっと肩に力が入っていた。
こうなる前に、そんなに気にしていなかったことまで、全部わからなくちゃいけないって勝手に思い込んで。
「先輩……」
「ん?」
「私……すごく楽しい」
私がそう言うと、先輩は目を細めて笑った。
「イルカショーも見るか」
「うん!」
相変わらず手は離せない。
こんなところで迷子になったら先輩を探せない。
だけど、事故以来初めてのまともなデートを、心から楽しんでいた。