「へぇー、今だって私より大きいよ? ほら」
上昇していくサメの前に並ぶと、先輩は「プッ」と噴き出す。
「まったく莉子は、小学生みたいだな。サメと背比べするなんて」
確かにそうだ。
だけど楽しくてたまらない。
「ほら、あれはマグロだって」
先輩の指差した先には、私の身長ほどありそうな魚が泳いでいる。
「うわー、これも大きい」
「あれ? おいしそうって言わないんだな」
「もう!」
いつの間にか、周りに人がいるなんてこと忘れてた。
フェイスブラインドになる前だって、そうだったんだ。
いつもいつも誰かに会うかもしれないと、アンテナ張りながら歩いていたわけじゃない。
そんなことにやっと気がついてハッとする。
私……余計な気を使いすぎていたのかも。