髪が短い女性なんて、一瞬映ったくらいでは男の人と間違える。


そして、遊園地は……初めてのキスをした観覧車を思い出してしまって、もう一度行きたいとは言えなかった。
またキスを期待しているようで……。


あれから先輩は、キスをしようとはしない。

抱きしめられたのだって、母とケンカして泣いたときくらいだ。

先輩、待っててくれてるのかな……。
今は私に余裕がないから。


結局あれこれ考えて、水族館を選んだ。
魚なら顔の特徴がわからなくたって楽しめる、はずだ。


水族館は、電車を二回乗り継いで、一時間近くかかる。

乗り換えの駅のホームでも、車内でも、彼は私の手を握り続けた。
それにどんなに励まされたか。


たくさんの視線が私に突き刺さる。
夢とのことがあってから一層怖くなった視線は、私を疲弊させた。