『莉子』
「先輩、テストどうだった?」
夕方になってスマホが鳴った。
電話は安心できる。
互いに顔が見えないからだ。
笑っている、怒っているなどの表情はわかるとはいえ、ちょっとした変化に気が付いていないかもしれないと、いつもビクビクしていたから。
電話なら同じ立場でいられる。
『莉子まで塾の先生みたいなこと聞くんだな』
「だって、心配してたんだよ」
『サンキュ。手ごたえあったよ。
莉子と一緒に頑張ったからな、俺』
自慢気にそう言う先輩に笑みがこぼれる。
それに、遠回しに、私も頑張ったのだと言ってもらえている気がした。
『明日、九時に迎えに行く』
「……うん」
『莉子?』
歯切れの悪い私に気が付いた先輩が、心配そうな声をあげる。
「先輩……ずっと手つないでてくれる?」
『もちろんだ』
先輩を信じるしかない。