「あれっ?」
隣の新山家から響ちゃんらしき男の人が出てきて、どこかに出かけるようだ。
彼の肩には黒いエナメルバッグがかかっている。
相変わらず、響ちゃんと顔を合わせてはいない。
時間が経てば経つほど、自分からは会いに行けなくなってしまった。
「走ってるの? 勉強は?」
聞きたいことはたくさんあった。
だけど……毎日来てくれる先輩を裏切るようなことを、どうしてもできない。
それに……響ちゃんのことが気になるのは、きっと幼馴染みだからだ。
私が今、好きなのは……哲哉先輩、だ。
カーテンを閉めた。
いつまでもママゴトやお医者さんごっこをしていた私達とは違う。
過去は、忘れよう。