いざとなればスマホがあるとはいえ、そんな不安でいっぱいでは、とても出歩く気にはなれなかった。


夏休みが終わりに近づいたころには、先輩のおかげで勉強も追いつき、それどころか少し難しい問題も解けるようになっていた。


「莉子。息抜きしようか」

「うん!」


私よりずっと勉強漬けの先輩にそう言われて、キッチンに冷たいお茶を取りに行こうとすると「違う違う」と止められる。


「遊びに行こうかと言ってるんだよ」

「遊びに?」

「そう。俺がついてるから、思い切って、な」


諭すように話す先輩は、私がこのまま引きこもっていては前に進めないことがよくわかっている。


「でも……」

「ずっと、手つないでたら、大丈夫だ」

「……うん」