「あれ、ちょっと砂糖が足りない?」
自分も一口食べてみると、あっさりしすぎておいしくない。
「いいの、いいの。
俺、甘いのはあんまり得意じゃないから」
そうだっけ?
一瞬そう思ったけど、きっと失敗した私を気遣ってくれてるのだ。
あまりおいしくないパウンドケーキを食べ終わると、勉強タイムだ。
私が学校の宿題をリビングのテーブルに出す一方で、先輩は塾の難しいテキストをカバンから取り出して並べる。
「先輩、宿題は?」
「すぐ終わるからあとでいいよ」
「えー。その余裕、なんかムカつく!」
医学部を目指すには、学校の勉強の数段上のレベルが要求される。
私は宿題でアタフタしているというのに。
「先輩、何科のお医者さんを目指してるの?」
「のうげだよ」
「のうげ?」