「その時、花に話しかけてるのを見て……」
そんな姿を見られていたなんて……顔が真っ赤に染まる。
「優しい子なんだなって思った。
それから気になって、いつも目で追ってた」
平松先輩に見られていたことなんて、少しも気が付かなかった。
だって、私は響ちゃんしか……。
「急に返事はできないか……」
平松先輩の目の緊張が緩んだ。
「少し考えてくれないかな。俺、待つから」
「……はい」
それからどうやって教室まで辿りついたのか覚えていない。
教室に入るとすぐに芽衣と千春が駆け寄って来たけれど、チャイムが鳴って話すことが出来なかった。
数学の教科書を開いて窓の外の空を見上げると、さっきまで晴れ渡っていたのに、灰色の雲がせり出してきていた。