「あっ、いた」


母を見つけたようだ。


「莉子、あそこでTシャツをたたみ直している人がお母さんだよ。行っておいで」


先輩の指差した先には、ショッピングセンターの制服に身を包んだ女の人がひとり。

私は先輩の手を離して、歩き始めた。
一歩一歩踏みしめるように。

そして……。


「お母、さん」

「えっ? 莉子!」


後ろから話しかけると、母はひどく驚いて目を丸くしている。


「あなた、どうして……」

「アイス、おいしかった」

「莉子……」


母の目が一気に潤んでくる。


「冷やし中華も、おいしかったよ」

「莉子……」


母の目からポロリと涙がこぼれていくと、私もまた涙を我慢できなくなった。