「ありがと」

チョコチップはパリパリした触感がアクセントになっていて、想像以上においしい。


「先輩も食べる？」

「サンキュ」


私がメイプル味のアイスを差し出すと、自分のスプーンでガバッとすくって、口に放り込んだ。


「あー、すごい食べた！」

「いいじゃん。こっちもやるから」


私達の仲はあの事故を境にして、確実に深まっていた。


アイスを食べ終わると、なんとなく沈黙が訪れる。
このショッピングセンターのどこかに、母がいる。


「なぁ、莉子。お母さんどこの売り場？」

「……衣料品。多分、子供服」


先輩が再び私の手を取ってエスカレーターに乗った。


「先輩、あの……」

「莉子の気持ちを伝えておいで？　お母さん、きっと待ってるよ」

「……うん」


そのまま子供服売り場を目指した彼は、私の手を強く握ったまま、キョロキョロとあたりを見渡している。