大きなショッピングセンターの衣料品売り場で働いている母は、パート仲間に会えばわかるし、何度も来てくれる客だってわかるだろう。

だけど、私は……自分の家族の顔すらわからない。


「そう……それじゃ、留守番お願いね。
あっ、そうだ。
ショッピングセンターのフードコートに有名なアイスクリームショップが入ったのよ。
莉子、来てみない?」


何気ない母の提案に、ブチッとなにかが切れた。


「行けるわけないじゃない! 友達とすれ違っても無視するんだよ、私。
わざわざ嫌われにいけって言うの!?」


ショッピングセンターで友達とすれ違うとは限らない。
むしろ、すれ違わないことの方が多い。


だけど、こんなに不安なのに、どうして理解してくれないの!?という思いでいっぱいだった。