今年の夏は、例年より暑いらしい。

そのせいなのか、家に帰ってきてからの私は、なんだかイライラしていた。


「おはよう。お母さんです」


私が朝起きてキッチンに行くと、母がにっこり笑う。


「おはよう」


たったこれだけの会話なのに、なぜだか腹が立つ。

「お母さん」なんて言わなくても、家ならわかるの!

母が私のために一生懸命してくれているのは、理解している。
だけど、腫物を扱うような態度に、腹を立てていたのだ。

いや違う。
事故の前とは一変してしまったこの生活に、嫌気がさしているのかもしれない。


「莉子、お母さんパートに行くけど、ひとりで……」

「大丈夫」


ぶっきらぼうに答えると、母は眉をひそめた。

八つ当たり、なのだ、きっと。