「"きょうちゃん"って言うんだ、その人。男の子? 女の子?」


夏未先生は私の話を聞きながら、これからどうしていったらいいのかを常に考えてくれている。
そしておそらく、響ちゃんも巻きこもうと、している。


「男、です。本当は”ひびき”って言います」

「ひびき君、ね」


先生はさりげなく「それならこの漢字かな?」とカルテに“響”の一文字を書いた。


私は頷きながらも焦っていた。
響ちゃんには和代先輩がいて、私には哲哉先輩がいる。

私のために皆を振り回したりできない。


「莉子ちゃんがいれば、響君頑張るんじゃないかしら」

「えっ?」


先生が予想外の言葉を口にした。