「そう、です」


小さいころ、お父さんのように医師になりたかった響ちゃんは、私と一緒によくお医者さんごっこをした。

まだ文字すら上手く書けなかったのに、ミミズの這ったような字でカルテを作り、「はい、次は長瀬さん」なんて私を診察してくれた。

聴診器は家にいくつでもあったようで、本物をこっそり拝借して。


そのうち、私も患者役じゃつまらなくなり、看護師の真似をして響ちゃんに注射をした。
さすがにおもちゃだったけど。


私が看護師になりたいと思い始めたのは、そのころからだ。

きっと医者になるだろう響ちゃんの横で、カルテを差し出したかった。