哲哉先輩の決意を聞いて、モヤモヤしていた気持ちがこぼれた。
「あ、そう! 看護師さん!
いいわねぇ。私もお世話になりっぱなしよ」
先生はニコニコ顔だ。
「でも、患者さんの顔がわからないのは……」
「うーん」
夏未先生は低いうなり声をあげ、しばらく黙り込む。
「正直言って、顔がわからないというのは不自由ではあるわね。
だから全然平気なんて言えない。
だけど、たとえば……オペ室を選ぶとか、外来ならできるんじゃないかしら。
病棟はたくさんの人が入り乱れたり、病室変更なんてのもざらだから、大変かもしれない。
だけど外来なら名前を呼んで患者さんを呼ぶわけだし」
そっか……。
少しは希望があるの、かな。