平松先輩に促された私は、教室に残る千春と芽衣に一瞬視線を送って、廊下に出た。
そして、突き刺さる視線を感じながら彼についていくと、人気のない体育館の裏に到着した。


「あのさ」


クルッと私の方に振り返った先輩が私の目をじっと見つめるから、思わずうつむく。
照れくさくて、まともに目を合わせられない。


「俺のこと、知ってる?」


私は大きく頷いた。
「先輩のことを知らない女子なんていないですよ」と言いそうになったくらいだ。


「よかった。突然だけど、長瀬さんって彼氏いる?」

「……いえ」


それって……。


「俺、ずっと長瀬さんのことかわいいと思ってて……もし彼氏がいなければ付き合ってほしいなって」

「えっ?」


思わず声が出た。

“幼い”という意味で"かわいい"と言われたことはあるけど……先輩が言っているのは、違う意味、だよね?